ガタカの主人公、ヴィンセントは、ある人物に成り代わることで遺伝子チェックをすり抜けるという機会を得ることとなりました。しかしながら、成り代わるためには身長が足らず、彼は手術によって慎重を伸ばすという、非常に痛々しい方法を取らざるを得なかったのです。
(出典:Sony Pictures Entertainment Japan lnc.)
そして、手術を受けた彼がその自分の状況を振り返った独白のフレーズがこちらです。
[Today’s phrase]
とくにこれといって特別な文法が用いられているわけではありませんが、やや長い文章であるため、そういった文章が苦手な人には読みづらいものとなっています。こういった長い文章も、文法的に分解して理解できるようになりましょう。
さてまず、この文章は次の3つに分解できます。
I took my mind off the pain by reminding…
(that when) I eventually did stand up, …
I’d be two inches closer to the stars.
このように分解できる理由としては、それぞれの文章がちゃんと文章としての要素を満たしているからです。ここで言う文章の要素とは、いわゆる文型のことで、それぞれ第3文型、第1文型、第2文型の要素を満たしています。文型についてはここで触れるとそれだけでとても長くなってしまいますので、初めて聞いた、という人は文法の本などを読んでみましょう。
さて、このように、それぞれが独立した文章として成り立っていることを確かめた上で、それぞれの文章について考えていきましょう。
まず一つ目の文章は、take A off Bの表現になっているところが重要です。これはAをBから取り去る、などの意味になりますが、それでは「痛みから精神を取り去る」といった意味になってしまい、やや意味が通りません。
ここで、「痛みと精神を分ける」という意味合いから、「痛みから目を背ける」だとか、「痛みに耐える」といったような意味を導くことができればおおよそはクリアしたといえるでしょう。その後に続くbyは、手段を表すbyで、「~によって」といった意味です。続けると、ここでは「~を思い出すことによって私は痛みに耐えた」という訳を得ることができます。次に、何を思い出したか、という点に目を向けましょう。
その内容が、that節にあります。その内の一つが、when I eventually did stand up, …の部分です。eventuallyは「ついに」といったような意味で、finallyと似ています。では、did stand upとは何でしょうか。
stand upは「立ち上がる」ですが、ここのdidは強調のdoと呼ばれます。通常ならばstood upとして過去形にするところを、did stand upと敢えて分離させることで、動詞を強調することができるのです。それを踏まえて、「ついに私が立ち上がったとき」と訳すことができます。
that節のもう一つの内容が、I’d be two inches closer to the stars.です。「ついに私が立ち上がったとき」にどうなるか、といった内容ですね。ここでのI’dは、I wouldの略であると考えられます。wouldは特に’dとなりやすいので覚えておきましょう。ここでwouldを使うのは、本来ならばwillを用いることで未来のことを言い表したいところ、that節を目的語とするremindに対応するtakeが過去形であることから、時制の一致が起こるため、willの過去形であるwouldとなるからです。
two inches closer to the starsは、「2インチ星々により近い」という意味です。より、ということは何かとの比較級ですが、それは手術前の自分との比較であることは分かりやすいでしょう。前の項と合わせて考えれば、「ついに私が立ち上がったとき、私は2センチ星々に近づくことになるのだ」と訳することができます。
そうなると、remindを「思い出させる」として訳すとややぎこちない気がしてきます。ここでは、「自分に言い聞かせる」などと訳出するとすっきりするかもしれません。
[Today’s question]
上記の文章を、訳出してみましょう。
まずは主節である部分を、仮に「~だと自分に言い聞かせることで、私は痛みに耐えた」と訳出します。次に、remindの目的語として、「ついに私が立ったとき、星々に2インチ近づく」という内容を鑑みて、次のように訳出できれば完璧です。
≪翻訳例≫
remindを「自分に言い聞かせる」と訳したり、take my mind off the painを「痛みに耐える」と訳したり、とするのは、学校教育で習うような英語で言えば誤りとされるかもしれません。しかし、実際には英語の訳は様々な可能性を秘めており、一様に定義できるものではないのです。
そのため、元々の意味にとらわれることなく、柔軟な発想を忘れないようにしましょう。
今日はこの辺で!次回は、また別の映画からフレーズを紹介します。